飼い主としての心構え

飼い主としての心構え

「あなたの犬はがんです!」
このシチュエーションは突然にやってきます。

私自身がそうでしたし、多くの場合がこれに当てはまるのではないでしょうか。
それは、犬自体が敵に悟られないための本能として病気を隠すように行動するからです。

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日々のスキンシップや行動チェック、定期的な検査は病気の予防には欠かせません。

それでも、高齢犬になれば、かなりの確率でがんを発症してしまうのです。

愛犬ががんと診断されたときに、大切なことがふたつあります。
ひとつは、がんはとても深刻な病気ではありますが、他の病気と同じように治療することができます。

あなたの犬は、まだ生きています。今日も、明日も、もしかしたらずっと先まで生きています。
そうです。希望は残っているのです。決してあきらめないでください。

ふたつめは、あなたの愛犬にとって非常に重要なことです。
それは、あなたの愛犬は、がんになってしまったことを理解していません。

理解することは無理ですし、する必要もないのです。
また、死ぬことを理解することもできません。

愛犬にとって大切なことは、あなたと毎日楽しく過ごすことだけなのです。
ですから、あなたが悲しんではいけません。泣いたりしてもダメです。

犬は、あなたの行動に敏感です。もし、あなたが悲しんでいたら
愛犬は自分が何か悪いことをしてしまったのかと思ってしまいます。

あなたがいつも楽しく接してあげることこそが、愛犬にとっては何よりの幸せなのです。
このことを決して忘れないでください。

 

治療に際して決めること

診断において間違いなくがんであることが判明した場合、飼い主さんには決断することがあります。

それは、病気(がん)と闘うためにどんな治療方法を選択するかということです。

獣医師は、特定の治療方法を勧めたり、いくつかの選択肢を提案したりすると思いますが、最終的に決断しなくてはならないのは飼い主であるあなた自身です。

その時に大切なことは、獣医師の話をきちんと理解し、分からないことは質問して納得するまで繰り返し話を聞くという姿勢が重要となります。

納得のいくまで話を聞いても、すぐに決断することは難しいと思います。

ですから「時間を下さい。」と遠慮なく言ってください。これは愛犬のことだけでなく、あなた自身のことを考えることも含まれますのでとても大切なことです。

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愛犬ががんという診断をされてショックを受けるのは当然のことです。

さまざまな感情が込み上げてくることでしょう。まずは気持ちを落ち着かせてください。

そして、冷静に今後の治療をどうするのか家族や友人、専門家に相談してみるのもいいでしょう。

また、診断の内容に疑問があったり、確信が持てない場合は、他の病院でのセカンドオピニオンを受けることもできます。

ただ、早期の決断が重要ですので時間をかけ過ぎてはいけません。

 

完全な答えはない

すべてのがんに対しての特効薬は、現在のところ存在しません。

がんの種類、犬の年齢、健康状態、食欲、犬種、症状、進行具合などによって治療方法も変わってきます。

また、飼い主さんの個人的な状況や考え方によって決断内容も変わってくるでしょう。

まったく同じ状況下であっても、ある飼い主さんは積極的治療を希望し、別の飼い主さんは、痛みを緩和する治療を希望することもあるわけです。

どちらの飼い主さんも自分の愛犬にとって、もっとも良いと思われる方法を選択したわけです。

大切なことは、どちらが良いかではなく、あなたが決めたことですから正しい選択だと信じることなのです。

なぜならば、あなたの愛犬のことを一番よくわかっているのは、あなただからです。間違った判断かもしれないと思わないでください。

あなたの決断が最善と信じましょう!

 

治療するか、しないか

「治療しない。」なんて選択するわけがないでしょ!

誤解しないでください。治療しないという意味は、何もしないわけではなく、獣医師のアドバイスを受けながら、がんの症状を抑え、愛犬が痛みで苦しまないように残された時間を快適に過ごせるように、その世話に全力を尽くすということです。

この治療をしないという選択の要因の一つとして、犬の年齢があります。

11歳の犬が治癒の見込みが無いがんと診断された場合、その犬種の平均寿命が9歳~12歳の場合、数か月間の集中治療をしていくらか生きられる時間を引き延ばしたとしても、その日々は必要のない苦しみにさいなまれるだけかもしれません。

生きられる時間よりも、その中身の質を大切に考えた方が犬にとっては、より良いこともあると思います。

愛犬の気持ちを考えて、どうしてもらいたいのかをじっくりとあなたが考えてあげてみてください。

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積極的治療

ペットのがんは、発見された時にはある程度進行していることが多いので、効果的な治療を行うためにいくつかの治療方法を組み合わせることが良くあります。

この場合、目指すのはできるだけ完治の可能性を高めること、あるいは完治は出来なくても症状が安定している状態をできる限り引き延ばしてあげることです。

残念なことですが、はじめから完治の見込みがないであろうということがハッキリしている場合には、緩和ケアという治療をすることもあります。

この治療の目的は、腫瘍の状態を安定させて、大きくなったり転移したりするのを抑え続けながら、犬や猫にできるだけ快適な生活をさせてあげることが重要です。

緩和ケアとホスピスケアという用語は混同して使われることが多いのですが、本来は異なるものなのです。

緩和ケアの場合は、手術や化学療法、放射線治療といった治療も行うことが多いのですが、ホスピスケアの場合は、どんな治療も選択できない状態のときに行います。

最もよく行なわれる癌の治療方法は3種類あります。

それは手術化学療法、そして放射線治療です。

治療にあたっては単独の場合もあれば組み合わせることもあります。

手術と化学療法は比較的大きめの動物病院ならほとんどのところで受けられますが、放射線治療が受けられるのは、がん治療専門科がある病院や大学付属の動物病院に限られてきます。

そのため、獣医師の紹介があっても放射線治療を開始するまでに2週間から2カ月、もしくはそれ以上待たされることもあります。

手術

手術は永い間ペットが受けられる唯一のがん治療でした。今でも一番初めに考えられる最も重要な治療方法です。

体内から癌細胞をすべて摘出して完治を目指すことが理想的で、切除しやすく転移もしていない小さな腫瘍に対してはとても効果的な方法です。

しかし、手術だけでは十分ではない場合もあります。それは腫瘍が大きすぎて安全に切除できない場合や、腫瘍が数カ所に点在している場合、また、がん細胞がすでに転移してしまっている場合には手術だけではあまり効果的ではありません。

それでも治療の一部として手術をするかもしれません。それは、大きな腫瘍を完全に取り除けない場合でも、出来る限り腫瘍を小さくしておくことで、化学療法や放射線療法といった他の治療が成功する可能性が高まるからです。

このように、腫瘍を一部摘出する手術を腫瘍減容積手術と言います。

完治や病状が安定する見込みが少ない場合でも、痛みを和らげたり腫瘍の内出血や破裂などの合併症を防ぐために手術をすることがあります。その場合の手術は犬を楽にするための緩和ケアの一環になります。

一番の広範囲にわたる手術は、断脚手術です。脚にできた腫瘍に対してはこの手術しかできないことも少なくありません。

脚を切断するとなると、飼い主さんは、がんが見つかったことに加えて、手術で脚が1本なくなってしまうということに大きな不安がのしかかります。

脚の切断を一大事に思うことは、犬自身よりも飼い主さんの方なのですが、残念なことに断脚が選択肢に浮上してきた時点で、あっさり治療中止を決めてしまう方もいらっしゃいます。

一番大切なことは、「犬の見た目がどう変わるか」ではなくて「その手術で命は助かるのか、もしくは長引かせられる可能性がどの程度あるのか」また、「犬が感じている痛みを減らすことができるのか」ということが最も重要なのです。

犬は、断脚手術をされても、多くの場合すぐに慣れてしまいます。特に若くて小さな犬は断脚後の状態に短期間で適応します。

反対に、高齢であったり大型犬の場合は、慣れるまでに時間がかかります。また、切断したのが前脚か後脚かによって違いがあります。

犬は、前脚で体重の75%を支えているので、大型犬や標準よりも重い犬は前脚を切断されると少し大変かもしれません。

犬の年齢や体重によっては、担当獣医が断脚を勧めないこともあります。

断脚手術によって犬が3本脚で上手に歩けるようになる数週間ほどは、飼い主さんが愛犬のために、さまざまな世話をしてあげなければなりません。車の乗り降りや階段の上り下りの際には、体を支えてあげましょう。

ただし、飼い主さんが高齢で犬が大型犬のような場合、犬を持ち上げることは困難となります。そのような時は、断脚という治療法を断念せざるを得ないこともあります。

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断脚手術は飼い主さんにとって受け入れにくい治療方法です。しかし、犬にとっては決してそうではありません。犬の社会的、美的基準は人間とは違いますから、脚を失うことによる心理的な負担は人間よりもずっと小さなものです。多くの犬はとても上手に順応して、普通の生活を送ることができるようになります。忘れないでください。犬は痛みが和らぎ、あなたと一緒にいて、美味しいご飯が食べられることが一番の幸せなんだということを。