愛犬が癌になってしまったら

【犬のがん】

あなた(飼い主)にとってこれほど恐ろしくて、聞きたくない言葉はないと思います。
わたし自身が身をもって体験していることなのでよくわかるのです。

私の場合は、生まれた瞬間から一緒にいるこの子たちが突然「がん」と言われたらと想像すると、なんとしても絶対に自分が守ってあげなければとの強い気持ちが湧いてきます。

父親犬のケンタが何の前触れもなく、ある日突然、末期がんを宣告された気持ちを二度と繰り返すまいと心に決めたからです。

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今では犬の寿命も医療の発展や食べ物のおかげで4年~8年ほど延びているそうです。
喜ばしいことではありますが、それだけ高齢による病気も覚悟しなければなりません。

いま日本にいる犬は1200万頭を超えています。そのうち何らかのがんを発症する犬が毎年およそ10%くらいいます。つまり、120万頭が癌になるということなのです。

さらに、10歳を超えた犬の50%が、がんで亡くなっているのです。
つまり、犬にとって、がんはとても身近な病気であるということになります。

(確実に進歩している医療)

10歳を超えた犬たちの50%ががんになる!という統計を聞けばビックリしますよね。
しかし、「がんになったら助からない!」と、諦めないでください。

今では、がんの治療方法は格段に進歩しています。決して希望がないわけではありません。
犬のがんは、人間のがんと似ているところがたくさんあります。

人間のがんの研究や治療が進歩したことで、犬や猫たちの医療水準も高まってきました。
とはいえ、がんはかなり手ごわい病気であることには違いありません。

しかし、今では多くの場合、かなり長く延命できる可能性がある、慢性疾患として対処できるまでになってきました。

【がんとは何なのか】

ほとんどの人が癌という言葉を知っていますが、がんという病気を詳しく説明できる人は意外に少ないのではないでしょうか。

がんを理解する上でまず、人間の体も動物の体も多種多様な細胞から形成されているということを覚えておいてください。

細胞は日々、成長と分裂を繰り返して、体を健康に保つために必要な細胞を増やしています。
細胞は古くなったり傷つくと死滅してしまうので、新たな細胞を作り続けているわけです。

ただしその際に、死滅するはずの細胞が死ななかったり、異常な細胞が新たにつくられることが起こります。このような異常な細胞を腫瘍といいます。

すべての腫瘍が癌とは限りません。正確に分析してみて、はじめて良性か悪性かが判ります。

良性の腫瘍の場合は、再発や転移する可能性は低く、殆どが手術で摘出できます。

一方、悪性腫瘍が「がん」といわれるものなのです。

この悪性腫瘍であるがんは、急速に成長して正常な細胞を破壊してしまいます。さらに、周りの組織や他の部位に広がる可能性もあるために完全に取り除くことが難しくなってくるのです。

悪性の腫瘍は、さまざまな種類があり、多くの場合、病名は最初に発症した場所を指すことがほとんどです。

例えば、骨から癌が発症した場合は肺に転移しても骨肉腫と呼ばれるのです。

ちなみに、治療の結果、がんが全く確認できなくなった場合を「寛解」といいます。この場合は症状が全く現れず、検査においてもがん細胞は検知されません。

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【人と動物の代表的ながんは5つ】

1.癌腫・・・・・・皮膚や内臓を覆う組織に発症し、犬のがんの中では最も多いがんです。

2.肉腫・・・・・・骨や軟骨、脂肪、筋肉、血管などの結合組織に発症します。

3.白血病・・・・・骨髄やリンパ節などの血液細胞をつくる組織に発症します。
(リンパ腫)
4.中枢神経のがん・・・・脳組織、脊髄、神経細胞に発症します。

5.メラノサイト・・主に皮膚や粘膜にでき、癌腫でも肉腫でもありません。
(黒色細胞がん)

【がんは予防できるのか】

結論から言います。「がんを完全に予防することは不可能」です。

残念なことですが事実です。しかし、がんを完全に予防することは出来ませんが、がんになる可能性を出来る限り減らすことは出来ます。

がんを予防するためのひとつの方法として、さまざまな化学物質を摂取しない、ということはかなり重要です。

例えば、毎日散歩に行かれると思いますが、犬が道端の草を食べることがあると思います。
犬の習性だから仕方ないと思っていませんか?

除草剤に含まれる2,4‐Dという化学物質は、ある種のがんを発症させるリスクを2倍にします。
他にも喫煙家の室内犬においては、受動喫煙による発がんの可能性を高めることに繋がります。

また、床用のワックスや多くの掃除用品などにも化学物質が多く含まれております。
愛犬や猫たちが自分の足や手をなめている光景はよく目にすると思いますが、舐めることで化学物質を大量にからだに取り込んでしまうわけです。

これは、室外においても起こり得ます。それは、舗装されたばかりのアスファルトの上を歩いたり、大量の除草剤がまかれた草むらの中を歩くことで犬たちの手や足に付着してしまうからです。

このことが分かれば、できるだけそのような場所を避けたり、散歩後の手足の洗浄を丁寧にしてあげることでほとんどの化学物質を排除してあげることができるはずです。

さらに、太陽光を長時間浴びることで皮膚がんの危険性も高まります。特に毛の短い犬種や色の薄い犬には注意が必要です。日陰を歩かせたり、長時間太陽光を浴びることの無いように注意してあげることも必要でしょう。

Friendship of american staffordshire terrier dog with little kitten

【犬に最も多いがん】

犬のがんの種類は100種類を超えていて、すべてを説明することはできません。ただ、がんになりやすい犬種というものが統計的に存在するので、その内容について説明させて頂きます。

まず、犬種別によるがんの発症別の統計です。

(肥満細胞腫)

ボクサー・パグ・ボストン・テリア・イングリッシュ・ブルドッグ・ブルマスティフといった短頭種。
ゴールデンレトリーバー・ラブラドール・レトリーバー・ビーグル・シュナウザーなどが高リスクです。

犬の腫瘍のうち3分の1は皮膚腫瘍でそのうち20%以上が肥満細胞腫です。
肥満細胞腫は、一見無害で小さな脂肪種や良性腫瘍にしか見えないのです。

顕微鏡検査によってはじめてその違いがわかるので、見過ごしてしまうと良性の腫瘍であったのにもかかわらず手遅れになってしまうことが多いのです。

肥満細胞腫は、皮膚のほかにも脾臓、肝臓、骨髄にも発症します。
これは8歳から10歳以上の老犬に多発することが統計上報告されています。

【扁平上皮がん・皮膚】

ブラッドハウンド、バセットハウンド、スタンダードプードル、ダルメシアン、ブルテリア、ビーグル、ボクサーなどが高リスクです。

(扁平上皮がん・爪)

ラブラドールレトリーバー、ジャイアントシュナウザー、スタンダードシュナウザー、スタンダードプードルなどが高リスクです。

扁平上皮がんは、犬の皮膚がんの中で2番目に多いがんです。皮膚のほかにも鼻、口、耳、爪に良くできます。
このがんが皮膚に見つかった場合は、殆どの原因が太陽光に当たり過ぎたか、何かの原因で慢性的に炎症が続いたことによる原因です。

扁平上皮がんは、肺やリンパ節などに転移することもありますが、進行は他のがんに比べると遅いです。ただし、爪に発症した場合は進行が速いことがあります。

(リンパ腫)

ボクサー、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、バセットハウンド、コッカースパニエル、セントバーナード、スコティッシュテリア、イングリッシュブルドッグなどが高リスクです。

リンパ腫は、免疫システムのがんと言われています。感染症に対する防衛反応において、大切な役割のリンパ球細胞が、がんになるからです。このリンパ腫は中高齢の犬に多くみられます。からだのどの部分にもできるがんですが、リンパ節に最も多く発症します。初期の段階では、痛みもなく、発熱や気分も悪くならないことがほとんどです。

(骨肉腫)

ロットワイラー、グレイハウンド、セントバーナード、ドーベルマンピンシャーをはじめ大型犬に高リスクです。

骨肉腫は、犬の骨にできるがんの中で、最も多いがんです。非常に進行が速く、大型犬に発症することが特徴で、小型犬にはめったに発症しないがんです。また、メスよりもオスに発症しやすいという統計があります。

(血管肉腫)

ゴールデンレトリーバー、ボクサー、グレートデーン、ジャーマンシェパード、イングリッシュセッター、ポインター、バーニーズマウンテンなどの大型犬が高リスクです。

血管育種は、骨肉腫同様進行の早いがんです。個の癌のほとんどは皮膚の表面や皮下、脾臓、心臓、肝臓にできやすく、体中に転移していく可能性があります。その理由は、初めに発症する場所が、血管の中であるためです。
体中をめぐる血液を通して癌細胞が移りやすいという性質があるからです。高齢犬のオスに発症しやすいといわれています。

(組織球肉腫)

バーニーズマウンテン、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、ロットワイラー、ドーベルマンピンシャーなどの大型犬が高リスクです。

組織球肉腫は、免疫システムを担っている白血球の一種(組織球)が癌化したものです。異常細胞が、血流に乗って別の組織へ運ばれてしまうので複数の個所で腫瘍ができることが多いのです。また、バーニーズマウンテンドッグの場合は遺伝する病気と考えられています。このがんは、肺、肝臓、脾臓、リンパ節、皮膚、脳でも発症することがあります。多くの場合、中高齢犬に発症する傾向があります。

(乳腺癌・精巣癌)

乳腺癌・・・避妊をしていない5歳から10歳のすべての犬種

精巣癌・・・虚勢をしていない10歳以上のすべての犬種。

乳腺癌も精巣癌も若いうちに避妊手術や去勢手術をすれば、ほぼ100%発症が防げるのでほかの癌とは違います。
乳腺腫瘍は約50%が悪性(がん)で、その場合は、肺に転移することが多いです。すべての乳腺に発症する可能性はありますが、肛門よりの4カ所が最も多い場所となります。

精巣癌は、精巣や陰嚢周りが腫れることがほとんどです。去勢手術をすれば病後の経過も軽く、転移する確率もかなり低くなります。

 

【癌が疑われる症状】

どの種類のがんでも早期発見がかなり重要です。発見が早いほど効果的な治療ができ、治る可能性も高くなります。
実際には、がんかどうかの判断は、獣医師に診てもらうしかありませんが、飼い主として、疑われる症状を知っておくことが必要です。

※犬は自分の痛みや病気を気付かれないようにすることが本能的に備わっています。それは、野生の場合では、他の天敵に対して命取りになるからです。大切なことは、飼い主さんが些細な兆候を見逃さないように注意してあげることです。気になる兆候を見つけたら早めに獣医師に診てもらうことが一番の早期発見につながります。

(よくある兆候の例)

●炎症や傷がなかなか治らない。
●異常な腫れが治らない、または大きくなる。
●体重の増減。
●傷口からの出血や膿が出ている。
●口臭がくさい。
●食欲不振や嘔吐。
●散歩や運動を嫌がる。
●歩行障害が続いている。
●呼吸が荒く、苦しそうにしている。
●排尿がうまくできない、または血尿がある。
●排便がうまくできない、下痢が続いている。
●皮膚や歯茎に赤い斑点ができる、または歯茎が白い。
●けいれんや発作を起こす。

以上のような症状を見つけたらすぐに病院で診てもらいましょう。ただし、必ずしもがんや重病ということとは限りません。慌てずに対処してください。

あなたの愛犬が中高齢になったら、6ヶ月から1年に1回は、詳しい検査をすることをお勧め致します。

見た目には何も問題ないようでも、隠れた病気が見つかるケースが良くあります。

また、大型犬は小型犬よりも年を取るのが早いため、5歳を過ぎたころから定期的な検査を実施していくことをお勧め致します。